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ITの導入範囲を決めた後、どのように進めるか

 2019.7.15 お役立ち情報 ブログ

前回の復習:大きく考えてから進める

前回まではIT導入のために、大きく戦略目標を決めその中から絞り込んでいくということを提示しました。特に経営戦略を考えてから重要なものに対して、ITの導入を考えるという段階を踏むということが大切です。絞り込んでいくには、部門から考える方法がありますができるだけ機能で絞り込んでいくことを推奨しています。部門で考えてしまうと現在の業務を中心に考えてしまい、より生産性の高い機能を考えなくなってしまう恐れがあるからです。このため理想的な業務の流れを考えながらIT導入を検討することが大切です。つまり、現状の業務をそのままIT化するのではなく一旦業務を整理して改善や改革をします。

前回のコラムはこちらから
ITを導入したいと考えたとき

今回は、経営戦略を決め、ITの導入範囲を決めた後、どのように進めるかということをお伝えします。

業務改善の手順

それでは業務改善の手順というのはどうやればいいのか、当社(株式会社エムティブレイン)が推奨する業務改善の手順を以下に説明します。

1.メンバーの選出

まずはじめに行うことは、メンバーの選出です。業務改善を行うため部門を超えてその業務に関係するメンバーを集めます。最も大切なことはこのメンバーの選出に経営者が関わることです。これは、業務改善を経営課題と捉えて会社全体のプロジェクトであると認識してもらう必要があります。また、会社全体の業務を部門間のこだわりや軋轢などに惑わされず改善するために経営者自らが選出をします。

メンバー選出は非常に重要なため詳細に解説します。

ポイント①:現場を知るメンバーを入れる

メンバーは業務現場をよく知る人を選定します。現場業務に関わる人は日常業務が忙しく、当初は参加するが、途中から欠席し始めることがあります。しかし、会社の重大なプロジェクトであるということを社長からメンバーに周知徹底して必ず現場のメンバーには出席してもらうようにします。

また実際の業務を改善するのですから、通常の業務だけでなくイレギュラーな業務をたくさん行っている人ほど参加してもらう方が業務改善の効果が上がります。現場の業務を管理するマネージャーの参加も良いのですが、それだけでは理想的な業務を語るだけで机上の空論になり、改善しないことになりますので実際の業務を知っている人に関わってもらうようにします。

ポイント②:部署や専門知識の違うメンバーを入れる

最終的にITを導入するからパソコンに詳しい人を選出するというのではなく、業務に詳しいひとを選出しましょう。パソコンに詳しい人が居ても良いですが、その人に任せきりにならないように、また凝り固まった視点では真に有効な改善を期待できないため、様々な意見が出て良いのです。

ポイント③:職場内でミッションとして周知する

社長は全ての会議にできるだけ参加してください。欠席するのであれば代理を立て、代理出席者から必ず報告を聞いてください。また会議においてはコメントを必ず残すようにして、重要なプロジェクトあるということを周知させてください。
社長から見られているということにより、現場のモチベーションが高まり、問題点を出しやすくなります。

ポイント④:評価を予め明らかにしておく

業務改善の話をすると、問題点ばかり挙げ「ここが困っている」「ここができない」という悲観的な言葉が多くなる場合があります。しかし改善策を考えて自分たちがどれだけ楽になるか、どれだけ会社の売り上げに貢献できるか、といったことを理解してもらい、それが部門や個人の評価につながるということを示しておく必要があります。

ポイント⑤:トップが自ら必要性を説明する

上記のよう部門や個人の評価につながるということを理解した上で、最終的に自分たちの改善により、自分たちの仕事がなくなるのではなく、新しい楽しい仕事ができるようになる、ということを理解してもらいましょう。変化しなければ会社は生き残れないということを理解してもらうよう周知徹底する必要があります

2.対象の決定

業務改善を行う対象の決定は、業務というくくりで考えてください。営業部門や出荷部門というように、現在ある部門で考えることがありますが、その部門もメンバーや役割が変わっていくはずです。部門でなく、受注業務や出荷業務というように業務で考えてください。会社にどのような業務があるか考えていただくために、以下の図表を参考にしてみてください。

対象を決めるのが難しい場合は、まずより簡単に取り掛かりやすそうな所から選んでも良いと考えます。ただし次の工程で話すように現状を把握するために少し広い範囲で検討を行いましょう。

3.現状把握

対象業務を決定した後は、現状把握です。
現状把握は、まずアンケートやヒアリングにより状況を確認してください。アンケートに於いて現状困っているところ、もし考えられるならあるべき姿や解決の方向性を記載してもらうと良いでしょう。ただしその解決方法を重視するのではなく、なぜその解決方法を思いついたのか、困っていることの原因は何かを掴むために利用してください。

また、できる限り作業量や業務量は数値で表します。しかし製造業の用にストップウォッチで測って業務量を算出するのは大変です。作業量を測定するために一か月の伝票枚数や作成帳票数を測定してください。このようにして1ヶ月の中で最も時間かかっている業務を探します。これを業務別に時間を測定した一覧表を作成します。
これは、最も時間がかかっている業務を探し出すのが狙いです。
しかし、時間を測定することに負荷がかかりすぎると本末転倒ですので、時間をかかっていそうな業務に目星をつけて測定することをお勧めします。

具体的例では、製造業であれば「作業時間」や「加工時間」、「運搬時間」などが考えられます。小売業やサービス業であれば、「お客様の対応時間」「発注業務などの伝票枚数」「社内資料である月報」などの作成時間などが挙げられます。

4.問題分析

問題分析する時に問題の認識には段階があります。
1つ目は、既に発生している目に見える問題です。例えば機械の故障の発生率や在庫過多などです。
2つ目は、今後発生する可能性がある問題、つまりリスクです。現時点では発生していませんが今後発生するであろうと考えるものです。例えば、受注量が増えている得意先の業務です。受注量の分析をすると、受注単価が減っているが、件数が増えている場合に起こる業務量の増加です。
3つ目は、現在問題と思っていない、目に見えていない問題です。これは業務の流れを示す業務フローの作成やインタビューによりお互いの業務の内容を見える化することで出てくる問題です。

まずは一つ目の前に発生している問題から取り掛かるようにして、2つ目、3つ目と続けていくようにしましょう

5.課題設定

問題が見つかれば、次にどうなっていることが望ましいかと言う設定を行います。あるべき姿になっているのはどんな状態か、そのためには何をしなければならないかを考えるのです。
ただし問題点を課題に設定するというのが分かりにくい状態の場合や、取り掛かるために時間がかかるようであれば、まずは簡単な問題点をどのように解決するかと言う次のステップに進んでも構いません。
このポイントは、重要なのですが難易度が高いため、当初は行わなくても結構です。ただし改善業務を行う上で、問題を課題に置き換える意識は忘れないようにしてください

6.解決策立案

解決策の立案では、2つの大きなポイントがあります。

ポイント①:ECRSの活用
ECRSは、業務改善を行う上での視点と優先順位を示したものです。

・Eliminate(排除)
 ⇒なくせないか
・Combine(結合と分離)
 ⇒一緒にできないか
・Rearrange(入替と代替)
 ⇒順番を変えれられないか
・Simplify(簡素化)
 ⇒簡単にできないか

この4つの視点を上から順に考えていきます。製造業でよく使われている手法ですが、どの業種であっても通用します。

特に「なくせないか」という視点は最も大切です。中小企業にとっては劇的に業務が改善するポイントです。中小企業が日々の業務に追われ、業務を見直す時間がありません。さらに製造業であれば、多品種少量生産を求められ、多種多様な得意先や提携先と業務を進めるため多種多様な業務の流れがあります。
例えば仕入伝票は手書きや FAX や EDI さらには統一伝票などがあり、決して一つに集約できるわけではありません。
またこのような多種多様な業務は、お客様のためと考え、非効率であっても許容してしまうからです。そして、社内の状況が分からなくなるため、社内で使う集計表やお客様のためにと思って作っている伝票なども細かく指示がされていることがあります。特に今までトラブルが発生したときに、以後のトラブルの発生を防ぐために付加情報をつけることが多いと思われます。さらにその作業が形骸化してしまい、「誰のために、なんのために」行っているかが忘れ去られた状態で業務を続けてしまうことが多いのです。
よくあるのは、伝票作成業務です。例えば、通常は細かい明細をつける必要がなかった出荷伝票に対して、特定のお客様でトラブルがあったため、明細付きの伝票を発行せざるを得ない場合があります。これが、特定のお客様だけにつけていたとしても、その業務を担当する人が変わっていくとすべてのお客様に明細をつけるのが当たり前になり、業務量が増える場合があります。
しかも受け取っている得意先で、その詳細な明細を見ないということであれば、その業務を「なくしてしまう」というのは全く問題がないはずです。

ポイント②:機械化(自動化)、IT化/IoT化を検討する
ここでようやく登場するのが自動化やIT化の検討です。
この場合の自動化の検討は、ECRSのうち「より簡単にできないか」という視点で考えます。
簡素化の視点で考える IT 化の最も効果的な部分は入力作業です。例えば、日報の入力作業は典型的な改善項目です。
製造業では、手書きで日報を記入し、後日別の担当者が入力するということを行うことがあります。この場合、そのため入力担当者の作業が必要です。しかし、これをタブレットや携帯端末の入力に置き換えて、作業者自身による入力で、入力担当者の作業を「なくす」ことができます。
また「一緒にできないか」という結合の視点では、何かのシステムと他のシステムが連携できないかという視点も加えるとより効率的です。例えば、銀行の取引データを自社の会計システムに流し込むなどという解決策は簡単な操作できるようになってきました。

7.優先度設定

優先度の決定は第1回目のところで書きましたが、簡単かつ緊急で、または重要なものから取り掛かりましょう。その他には、難易度が高く、かつ改善効果の高いものから始めると良いのですが、取り掛かりの場合は、改善効果が中程度であっても難易度が低いものから取り掛かることもお勧めします。難易度が低いものから取り掛かり成功体験を積むことが大切です。

8.実行

最終的には「実行」です。構想に従って現場参加型で実行します。
現場では改善に抵抗する人や関心のない人も居ますが、丁寧に説明して協力を得て行きましょう。
また実行時点で定量的に結果を取りまとめてください。これにより改善効果が目に見えてきます。

9.見直し

見直しは、メンバー全員で会議をして改善効果を評価してください。これには実行時点で取得したデータを活用してください。そして、はじめのステップから何度も繰り返すことにより、変化をし続けましょう。

小さくはじめて大きく育てる

ここまでは、業務改善を段階で進める方法を解説しました。
ITを活用しながら、改善を進めるポイントはもう一つあります。それは小さく初めて、大きく育てることです。

例えば、実在庫と理論在庫が合わない場合、入荷(仕入)、入庫、出庫、出荷(売上)などの時点で、商品や部品の出入りを記録する必要があります。しかしこれまでそのような作業を行っていない場合、作業途中の仕掛品を管理するなど行っていない業務を一気に追加するのはとても時間がかかります。
そのため、入庫(仕入)はバーコードで行い、途中の工程は「仕掛品置き場」を決めた目視管理を行い、最終製品が出荷されたということを管理する、運用から始める方法も良いでしょう。
つまり、全てを初めからやるのは業務の変化が伴わない場合もありますし、ITがそれに合致しない場合もあります。

上記の例でもあげましたが、製造業やサービス業でも、日報の自動入力やタブレットなどによる入力は改善効果が高い部分です。

タブレットにリアルタイムに作業時間を入力し、データを蓄積するということで、後から思い出す手間を削減することができます。また後工程の入力者の作業負荷を減らすこともできます。また決まった内容であれば、プルダウンやボタンの選択により正確な作業データを蓄積するメリットがあります。
最も大切なことは、作業日報をつけることではなく、作業日報から得られたデータを蓄積して標準時間との差異を分析することです。このため実際時間はどれくらいなのかということを、できるだけ正確に知りたいのです。これを実現するために簡単かつ正確な時間を測定すると方法を考えることが大切です。
また、IT化に於いてはすべての項目や作業を網羅する必要はありません。100%の完成度を求めるべきではないのです。これは、例外処理が多い中小企業であればあるほど、それらすべての業務をシステム化するには時間とお金がかかるからです。「80:20の法則」とよく呼ばれるように、20%程度の対応でも80%ほどの売上の得意先を占めることがあります。まずは、この20%からはじめてください。そして、システムも徐々に改善すれば良いことです。
この図表は、Pro-Managerのデモ画面ですが、今みなさんのお手元の手書きで書き込まれた伝票と見比べてください。「書き込まれた」項目は、これだけでも十分ではないでしょうか。はじめは「書き込まれた」項目からはじめて徐々に他の必要項目を増やしていくことは、現場の作業者の心理的な負担が少なくて済みます。
私もPro-Managerを使ってみましたが、小さく始めて大きく育てるには十分すぎるシステムと感じています。

 この3回で、業務改革や改善を行いITの活用につなげる方法を書きました。文章だけでは伝わりにくいかもしれません。また、どこかでお会いしてご説明できれば幸いです。


■執筆者
山口 透 (やまぐち とおる) http://mt-brain.jp
株式会社 エムティブレイン 代表取締役。「経営とIT」のコンサルタント。業務改革や改善の指導やIT戦略企画立案の支援を行うコンサルタント。現在、IoTやAIを中心に経営とITの橋渡しをする社外CIOサービスを提供中。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ


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