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中小企業のIT導入ポイント

 2019.5.9 お役立ち情報 ブログ

 
初めまして。
経営とITのコンサルタントの山口透と申します。

このコラムでは、中小企業がIT導入を進めるときにどのようにすれば良いか、というポイントを3回に分けて解説していきます。

はじめに、「IT」というと何をイメージするでしょうか。
パソコン、スマートフォン、IoTやAI でしょうか。
ITはこれらを含めて、企業の売上拡大や費用削減に効果を生み出すツールです。

目次

  1. IT導入の課題
  2. 費用対効果とは?
  3. 問題や課題を明確にする
  4. 経営的な視点から考える
  5. 課題や戦略目標にランクをつける
  6. 事例

IT導入の課題

中小企業においてITを導入するときの課題は何があるでしょうか。
2018年度版中小企業白書によると、上位3つの課題は以下のとおりでした。

1.コストが負担できない
2.導入の効果が分からない、評価できない
3.従業員がITを使いこなせない

つまり、費用対効果と人材面の2点が重要課題なのです。

今回は、課題のうち上位2つに関わる費用対効果の部分を中心に考えてみます。

費用対効果とは?

ITの費用対効果が分からないというのは、どういうことでしょうか。これは、他の導入する機器や設備と比べて導入効果がわかりにくいということと思われます。

例えば、製造業の場合で、生産設備を導入する時と比べてみましょう。

生産設備の場合は、「鉄などの鋼材を部品に加工をする」という目的に対してマシニングセンターなどを導入します。この他に「加工した部品や材料の運搬を楽にしたい」という目的があればベルトコンベアを、「重いものを上下左右に移動させたい」という目的があればフォークリストを購入します。

しかしITの場合は、「生産管理システムを導入したい」や「顧客管理システムを導入したい」という様に、導入したいものを先にイメージすることがあります。
上記の例で言えば、導入目的をはっきりさせずに「マシニングセンターを導入したい」「ベルトコンベアを導入したい」「フォークリフトを購入したい」と言っているようなものです。

もちろん「生産管理システムを導入したい」という時に、「どんな問題があるから生産管理システムを導入して解決したい」いうのであれば良いのです。
しかし、「他社が導入しているから」や「今まで手書きだから導入すべきだ」と言うという考えで進める企業が少なくありません。

ITを導入する時に、他の事例聞くと自社でも同じようにできると考えてしまうからなのでしょう。

特に他の企業で、「スマートフォンを使って営業効率が上がった」「クラウドのグループウェアを使って取引先と情報共有をしている」「すでにIoTを使って成果が出た」「中小企業もこれからはAIだ」などと言われると、焦って導入しなければならないと感じてしまうでしょう。

しかし、先ほどの生産設備を導入する事例であれば、他社がマシニングセンターを入れたからといって、自社でも全く同じ設備を導入するでしょうか。設備の大きさや加工できる能力などを十分に検討して導入するのではないでしょうか。

さらにマシニングセンターの場合は、どのような使い方をするということを頭の中で描いてから設備導入をするでしょう。

にもかかわらず、IT導入に関して他社と同じ様にしようと考えるのは、大きさや能力が目に見えにくいため、他社がやっていることと同様にできるのではないかと思われます。

もちろん他社と同様の進め方をして、効果がないとは言えません。

例えば小売業では、他社がタブレット端末を使い棚卸作業の効率化を進めた場合、同じような店舗規模で同じような商品アイテム数であれば、同様の導入効果が出る可能性はあります。

問題や課題を明確にする

では導入効果を高めるにはどうすれば良いでしょうか

最も大切なことは、ITを導入する前に「どのような問題点や課題があるのか」を把握することです。
さらにこの問題点や課題を解決して「最終的にどのような目標を達成したいのか」を考えることです。

事例を2つあげてみます。

一つ目は部品加工をしている製造業の例です。

「問題点:多くの加工作業が、高品質でスピードが速い熟練工に集中している」

この企業では、部品加工できる作業者は10名ほどいるのですが、難しい加工や急ぎの案件が入ってきた場合は、熟練工に任せっきりにしていました。
熟練工は、「技術は見て盗め」「指導は厳しく」など自分たちが受けてきた教育方法をそのまま次世代に行い、若い技術者が育たないという状況が起こっていました。
このため、熟練工が高齢化した現状でも加工作業が熟練工に集中するという状況になっていました。

「目的:加工作業の平準化」
「目標:熟練工から若手への技術継承が進む仕組みの構築」

そこで、「加工作業の平準化」を目的として、「熟練工から若手への技術継承が進む仕組みを考える」という目標をたてて、このための取り組みを行うことにしました。

二つ目は、地域で数店舗を運営しているスーパーマーケットの例です。

「問題点:お客様から欠品が多いという苦情が日々多くなってきた」

このスーパーマーケットは、地域に根付いており、新鮮な野菜や、安い肉や魚が手に入ると言う良い評判を持っているスーパーマーケットでした。品揃えが豊富ですが、近くに競合店が増えてきたため売り上げが減少していました。それにもかかわらず、複数のお客様からいくつかの商品が欠品をしているという苦情が多くなってきていました。

「目的:欠品をなくしてお客様が要望する品揃えに応える」
「目標:在庫管理を強化するしくみとシステムの導入」

そこで、「欠品をなくしてお客様が要望する品揃えに応える」を目的として「在庫管理を強化するしくみとシステムの導入」の目標を立てました。

このように、やみくもにシステム化を考えるだけではなく、最終的にどの目標を達成したいのかということを明確にして、共有する必要があります。

経営的な視点から考える

ではこのように導入目的や目標を見つけるためにはどうすれば良いでしょうか。
これには、経営的な視点が必要です。

経営的な視点とは、その企業にとって将来のために何が大事かを考えることです。

しかしこの経営的な視点を持って考えることがすぐにはできないかもしれません。
そこで経営戦略のフレームワークを使うことをお勧めします。

経営戦略を考えるフレームワークはいくつかあります。

図表:戦略マップ

この図は企業のマネジメント手法の一つである、バランススコアカードの戦略マップという図です

バランススコアカードは四つの視点をもとにバランスの取れた業績を管理するスコアカードと、戦略を共有するための戦略マップからなるマネージメントシステムです。

戦略マップは、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長という四つの視点から戦略目標をわかりやすい現場の言葉に置き換え、その因果関係を表現したものです。

私はIT導入を考えるときにこの戦略マップを社長や経営者が作成し、企業の中でどの部分の課題があるのか、どの課題をどのように解決したいか、さらにどこをITで強化したいのかということを明確にするとよいと考えています。

戦略マップを使って経営的な視点で考えることができると、次にどの部分を強化すれば良いかということが連想できます。
ITをどのように使うか、どの部分で使うか、導入の結果何を期待するかということを具体的にイメージできます。

戦略マップを作ることで企業全体の課題が、大変多く見えてきます。ただし「あれもこれも解決しなければならない」というイメージを持つことになります。

課題や戦略目標にランクをつける

次にするべきことはそれぞれの課題や戦略目標にフォーカスを当て、これを解決すると企業にとってどの程度インパクトがあるのかということを考えることです。

インパクトの大きさは、大・中・小で良いので必ずランクをつけます。ランクは、企業にとってITを導入すると「売上が上がる」や「新しいビジネスモデルを作ることができる」「今まで使っていた大きな費用を削減できる」と言う観点から考えてください。

さらに別の時間的な観点から、緊急・急ぎ・後回し という様に別の視点からランクをつけてください。

図表:2軸のマトリクスで考える

いずれのランク付けも、部門や部分最適ではなく全体最適を意識してください。

これらのランク付けができれば、あとは優先順位をつけることができます。

具体的には、インパクトと時間的な観点の2軸で考えて「緊急」かつ、インパクトが「大」のものから取り掛かれば良いのです。
もちろん費用的な観点も必要ですが、かけられる費用がないため「緊急」かつ、インパクトが「大」の課題を解決できなければ企業全体の課題解決が遠くなってしまいます。

事例

ここからは上記の手順ですすめた導入支援事例をご紹介します。

事例企業は、小型の食品業向け機械部品の製造業です。生産方式は受注生産で、製造量はある程度のロットサイズがあります。

この企業の問題点は、「これまで少ない取引先から大ロットの受注を受けて生産をしていた。しかし取引企業が増えたこと、またロット数が小さくなったことから、売掛金の管理や製造指図書作成などの事務作業が増えている」というものでした。

このような問題があり、事例企業では「販売管理システム」の導入や「生産管理システム」の導入を検討していました。そこでシステム導入前に上記の手順で経営戦略を確認し、今後どの方向を強化しなければならないかという話をしました。

具体的には、

– 昨年より1.5倍程度の伝票量になっているため事務作業が膨大になっている
– 部品在庫や仕掛品在庫と製品在庫が多く、管理作業や棚卸作業に時間が取られる
– 管理作業を行なっているにも関わらず、必要な部品が見つからず緊急で発注する
– 早い時期にお客様から受注を受けたにも関わらず、納品が間に合わないことがある
– お客様から特急の仕事が入り製造現場での優先順位が混乱する
– 上記全て問題認識はできたが、どれから手をつけてよいかわからない

といったことが上がり、かなり混乱していました。
そこで早急に進めるべき課題と、じっくり進めるべき課題に分けて進めることで合意しました。

経営戦略を確認した段階では、これからも得意先を拡大していくことは優先するという方向性でした。ここから「お客様に対する満足度を上げる(下げない)」という目標を立てて進めることにしました。

特に、「 早い時期にお客様から受注を受けたにも関わらず、納品が間に合わないことがある」という問題に対して、「顧客満足が下がることで、当社の評判が悪くなり売上が低下する」懸念がありました。そしてこの問題を解決することは、インパクトが「大」かつ「緊急」という結論になりました。

そこで、お客様への回答が正確に早くできる仕組みの構築を目標に定めました。

この目標を達成するため工程管理の仕組みとシステムを導入し、受注されている部品の進捗状況がほぼリアルタイムでわかるようにしました。これにより受注の進捗状況の回答が正確で早くなり、お客様の顧客満足度が高まりました

今回の調査では、受注量が増え業務量が増加しています。
このため、「販売管理システム」や「生産管理システム」を導入することで、増えた業務量に対して自動的に製造指図書を発行するなどをして業務効率を上げようとかんがえていたのでした。

しかし、実際は「お客様からの納期回答」をするための調査や確認時間に手を取られていることが問題でした。
さらに、売上と売掛請求回収のシステムが既に導入されており、業務量の増加にまだ耐えられる(つまり緊急度は高くない)と考えることができたのです。

さらに製造現場では製造指図書が回付されており、それぞれの工程の開始終了時に必ずチェックを付けている教育ができていました。

このため、先に工程管理のシステムを導入しても、それほど混乱なく工程管理の見える化ができました。また「お客様からの納期回答」の時間が大きく減少したため、事務作業の負荷が軽減し、現状でも業務量の増加に対応できています。

この様に、システム導入を先に考えるのではなく、経営戦略から優先順位をつけて考えることが大切です。


山口 透 (やまぐち とおる) http://mt-brain.jp
株式会社 エムティブレイン 代表取締役。「経営とIT」のコンサルタント。業務改革や改善の指導やIT戦略企画立案の支援を行うコンサルタント。現在、IoTやAIを中心に経営とITの橋渡しをする社外CIOサービスを提供中。
中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ


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